目次
はじめに
令和6年6月27日、青森市福祉増進センター(しあわせプラザ)にて「多職種協働研修会」を開催しました。この研修は、青森市地域包括支援センター寿永圏域の、町会長や民生委員、介護サービス事業所職員、薬局の薬剤師など、様々な職種が一堂に会し、認知症ケアについて学びを深め、ネットワークを構築することを目的にしています。
今回は「これからの認知症治療と、認知症との向き合い方」というテーマで、医療法人柏葉会 脳神経外科・内科 藤本クリニック 院長 藤本俊一先生よりご講演いただきましたので、ご紹介します。
認知症治療新薬「レカネマブ」について
レカネマブは、アルツハイマー型認知症の進行を遅らせる効果が期待できる新しい治療薬です。アミロイドβという脳内の異常タンパク質を減少させ、認知機能の低下を抑えます。これにより、約6ヶ月の遅延が認められますが、早期発見がカギであること、対象要件が複数あること、通院にかかる期間も長いこと、医療機関が不足していることなどが課題だとのことで、全国では2000程の症例があるようですが、その対象となりうる方はまだまだ少なく、従来の治療やケアも重要だとお話ありました。
認知症施策推進大綱・認知症基本法について
認知症施策推進大綱の概要
認知症施策推進大綱は、認知症対策を総合的に進めるための基本方針を示したものです。「共生」と「予防」を両輪に、国や地方自治体、医療機関、介護施設、地域コミュニティが一体となって取り組むべき施策が明示されています。以下、その主な内容です。
①普及啓発・本人発信支援(企業・職域型の認知症サポーター養成、ピアサポーターによる本人支援など)
②予防(認知症予防に関する事例集・取組の実践に向けたガイドラインの作成など。「予防」とは「認知症にならない」という意味ではなく「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」という意味)
③医療・ケア・介護サービス・介護者への支援(「認知症ケアパス」作成率100%など)
④認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援社会参加支援(本人・家族のニーズと認知症サポーターを中心とした支援を繋ぐ仕組み(チームオレンジなど)の整備など)
⑤研究開発・産業促進・国際展開
認知症基本法の概要
認知症基本法は、認知症の人を含めた国民一人一人がその個性と能力を十分に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する活力ある社会(=共生社会)の実現を推進することを目的としたもので、以下の基本理念に基づいています。
①基本的人権の尊重(認知症の人が自らの意思で日常生活や社会生活を営むことができる)
②正しい知識と理解(国民が認知症について正しい知識を持ち、認知症の人に関する理解を深める)
③障壁の除去(日常生活や社会生活における障壁を取り除き、認知症の人が対等な社会構成員として安全かつ安心して自立した生活を送り、社会活動に参画できるようにする)
④質の高いサービスの提供(認知症の人の意向を尊重し、良質で適切な保健医療サービスと福祉サービスを切れ目なく提供する)
⑤家族等への支援(認知症の人とその家族が地域で安心して生活できるよう支援する)
⑥研究の推進と成果の共有(認知症に関する研究を推進し、その成果を広く国民が享受できるようにする)
⑦総合的な取り組み(教育、地域づくり、雇用、保健、医療、福祉などの関連分野で総合的に取り組む)
これからの支援について
先生の講義を聴いて、認知症予備軍の方の早期発見と介入、早い段階での医療との連携、正しい病気の理解をより一層広めていく重要性を確認できました。また「認知症があろうがなかろうが、その人ができることをする・できるようにする」という内容が印象的でした。改めて「本人視点」ということを忘れずに、支援にあたっていきたいと思います。
各種相談窓口紹介など
①青森市地域包括支援センター寿永 TEL:017-739-6711
介護全般の相談を受け付けしています。(担当:北金沢2丁目、金沢2・5丁目、千富町2丁目、細越、安田、浪館前田、浪館、牛館、第二問屋町、高田、大谷、小館、入内、野沢、荒川、八ツ役、金浜、大別内、野木、上野)
※上記以外の住所の方はこちらから
② 脳神経外科・内科 藤本クリニック
物忘れが目立ってきた、もしかして認知症かも、そんな場合はぜひ早めの受診を
③ 青森市認知症ケアパス
認知症の状態に応じた支援の流れや、医療機関・サービスについてのガイドブックです。
④ 認知症ちえのわnet
認知症の人へのケアについて、上手くいった・いかなかったを共有するサイトです。ご家族、介護職員など、日頃のケアの参考にどうぞ!
引用
・厚生労働省:認知症施策推進大綱
・厚生労働省:共生社会の実現を推進するための認知症基本法について